【ポケカ】愛知CL2020 レポート

 

 

時は平成。

そこは遠い時代、尾張の国という小国が座した地である。

獣の肩のように東づてに盛り上がった山、西には大きく開けた口のように伊勢湾が広がっている。まるで地図から今にも出てきて人を喰らおうとせんばかりだ。

獣の吐息のように荒々しく吹き下ろす東風は”伊吹おろし”と名付けられ、親しみがあるらしい。

その背から生臭い匂いを捲し上げるように吹き荒ぶ潮風が、衣の袖から肌を貫くようなそんな冬の折。

 

”-紙しばき-”

これは、その遊戯を生業とする者たちが自らを揶揄する時に用いる蔑称のことだ。

簡単に言ってしまえば、紙に描かれた絵札で相手と競い合ってすったもんだするわけである。

 

そんな中でも、年に2回。一番強い人間が決められる催しがあった。

ポケモンカードゲーム チャンピオンズリーグ

 

 

 

こんなに関東から外れて遠くに出るのは、二十歳の時に大学編入試験で九州まで足を運んだ時以来だ。

遠方に外泊すると碌なことにならない。先に挙げた試験も宿泊先でまったく眠れずに挑み、使い古された布切れのようにずたにされて落第したことも加わって、上手く物事が運ばない印象しかない。

それまでによかったことと言えば、ホテルの受付嬢が北乃きいに似ていて可愛かったくらいだ。

しかし、今回ばかりはそうやって拗ねていては機を逃すかもしれない。それくらい大規模なイベントだった。

このポケモンカードゲームチャンピオンズリーグ(以下CL)は年に2回しか開催されない。

そればかりではない、約2000人という参加者の枠に抽選で通らなければ出場することも叶わない。

本当に運がいい。自分がツイていると考えずには居られなかった。

 (完全にノッてる)

関東地方の端に住んでいる私にとって、愛知県まで足を運ぶことはお財布の事情的にも決して容易いことではなかった。

往復の旅行費、宿泊費兼ねて5人もの茶色い偉人が召される程度である。

こんな特別なイベントに参加できるのに肩の力が入らないはずがない。

2週間前から環境デッキをすべて調べ上げ、より勝てるデッキを模索して考えに考え抜いた。

寝る時間も割いてまでずっと、勝利に対する貪欲さを高めていた。

そして当日。

 

【第1回戦】

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おかしい。

とうに着席時間は過ぎているはずである。が、私の前には誰も居ない。

対戦卓をもう一度確認する。間違っていない。

自分の周りの卓では、この日のために気を張った勝負師たちが続々と席に着いていく。

隣の人から「CL名物みたいなものですよ」と言われた。

 

不戦勝の3文字が頭をよぎる。考えないほうが難しい。

これがツイている、という人もいるかもしれない。いやこの会場にいる人間のほとんどがそう思ってしまうだろう。

だが、自分にとってはそうではなかった。

人脈もなければ環境もない自分にとって、見知らぬ人とたくさん対戦できる機会はとても貴重なものだ。

まして、初めて参加する大型イベントでの初戦。

かけてきた時間、お金、思考。すべてが空回りしてしまうかもしれない。

そのうち残念な気持ちで泣きたくなってきた。

 

非情にも告げられる対戦開始の合図。

あちこちからジャッジを呼ぶ挙手で擦れる服の音が聞こえた。

対戦記録シートに薄い紅色で記入されていく「NO SHOW」の文字。

 

とても不愉快な気持ちだった。

相手がいないことで勝ったことでは、自分のしたことが無碍にされ踏みにじられたような気持でいっぱいだった。

 

不戦勝。

こうして初めて参加するCLでの初めての対戦は終わった。

 

【2回戦】

VS3神ザシアン

後攻。

当時の環境では目下最強と言われていたデッキ。

もちろん対策していない訳がない。

やっと対戦できる、気合を込めた初手7枚。

マリガン。

まぁこれくらいはよくある。再度7枚ドロー。

マリガン。

さすがにおいしいネタはもういいぞ、再度7枚ドロー。

マリガン。

やっとポケモンが引けた…。

エネ4枚サポ1枚ポケモン2枚サーチ0。

想定していたプランには到底届かない手札。

しかも待て。相手の初手が10枚???(ポケカは相手のマリガン1回につき1ドローできる)

手札を与えることによって相手がブンブン丸。そりゃ事故るわけないよね、山札の2割引いてるんだもの。

結果サイド2‐6 敗北。

 

【3回戦】

VS超MM

 

先行

有利マッチ、のはずが初手に打点を出すためのポケモンがいない。

サーチ札もない。

唯一のエネ加速とドロー札で細い線を辿るゲームだった。

トップでデデンネGXを引き当てるも、展開できず。

結果打点を出せないまま、オーロットノワールに手札を引き抜かれまくって負け。

サイド0-6 敗北。

 

【4回戦】

VSピカゼク

 

初手サーチ札0枚、スタートポケモンはスターシールドのジラーチのみ。

3ターン何もできず、種ポケモンがいなくなってしまったので敗北。

サイドにデデンネが3枚落ち、もう一枚はボトム。

うーん、負け!

対戦相手の方が「サイドなんかすみません」と謝っていたが、勝負の場で起きること。

それは受け入れるほかにない。

 

サイド0-2 種切れ

 

____________

結果1勝3敗 1087位

 

いっそのことストレートに負けてしまった方が思い切りよく切り替えられたものだ。

砂で作り上げた城がさらさらと音も無く崩れていく方が、まだよかった。

不戦勝からタコ負けしたことによって、記録上は1勝、事実上はストレートドロップ。

 

運が絡む要素がある以上、負けたことに対して抵抗する意味は全くない。

素直に結果を受け入れる。勝つ者がいれば負ける者がいる。これは勝負事における常である。

だからこそ、不戦勝で得た1勝は濁った泥水を忌避するように目を背けたくなるものだった。

そしてこれはボロ負けした後に柿だけ食べた柿ピー。 

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ここで1句。

 

行かぬなら

キャンセルしよう

ヨクバリス

 

みんなもポケモンゲットじゃぞ~!

 

<おまけ>

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矢場とん 味噌カツ定食

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あつた蓬莱軒 うな重

 

おいしい食事処を教えてくれた皆さんありがとうございました。

 

たまたま日程があったので参加した棘フェス。無料で聴けるのが疑問に思えるくらい最高でした。誘ってくれたざくをさん、ありがとうございました。